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カート

カートが空です

創業明治31年

「天 盃」
歩んできた道

一杯の焼酎に注がれた、
一世紀を超える挑戦の物語。

PROLOGUE — 麦秋の筑前町

半世紀以上前、一人の男が舵を切った。

筑紫平野にある福岡県朝倉郡筑前町は、5月後半になると「麦秋」を迎える。
一面が金色に輝く、二条大麦の収穫期である。平野の外れ、森山地区のやや山あいに蔵元・天盃はある。
先代の3代目が、眼の前に広がるこの二条大麦を原料に「世界に通用する本格焼酎を造ろう」と思い立ち、舵を切ったのは半世紀以上も前のことである。

1898

明治31年 / 創業 THE BEGINNIN

「安価、車夫馬丁の酒」と
見られていた時代から。

創業は明治31年。最初は酒粕取焼酎から始まり、いも・米など各種の原料を経験する。戦時中・戦後、物資のない時代に貢献してきた焼酎は、当時「安価、車夫馬丁の酒」と見られていた。

やがて業界初となる自然真空蒸留機を開発して特許を取得。イオン交換樹脂やヤシガラ炭素で雑味を除去し、砂糖を加える——。次々と製品化した商品は甲類焼酎に近く、甘さゆえに好調に売れた。しかし、それは本当に造りたい酒だったのか。

1965

昭和40年 / 転機 TURNING POINT

子に、同じ思いを
させるわけにはいかない。

安酒の域を出られず、清酒へのコンプレックスと文化的な憧れを引きずっていた3代目に、転機が訪れる。1965年、長男・格(いたる)が誕生。家業を継がせる子に、自分と同じ思いをさせていいのか。

海外には、ブランデーの「コニャック」、ウイスキーの「スコッチ」——確かな価値観を持つ蒸溜酒がある。「本格焼酎を、世界の蒸溜酒より価値あるものにしたい」。その決意から、世界基準でおかしいと思うものをすべて排除し、現在の造りの原型を築きはじめる。

1970

昭和45年 / 造りの変革 INNOVATION

造っては壊し、
財産の大半を注いだ。

本格焼酎の最大の課題は蒸溜——そう見た3代目が力を注いだのが、蒸溜器の開発だった。自ら設計し、造っては壊しを繰り返す。財産の大半が蒸溜器に消えた。天盃の歴史は、蒸溜器との戦いであったかもしれない。

自らヨーロッパに渡り、コニャック・スコッチ同様の2回蒸溜を確信。世界に一つしかない自社開発の「天盃式蒸溜器」が完成する。同じ頃、薬品加工・炭素・砂糖を一切使用しないという社是を定めた。

天盃の歴史は、蒸溜器との戦いだった。

1976

日本初 常圧蒸溜で麦と麦麹だけで造る
無添加・大麦100%の麦焼酎が誕生

天盃のある朝倉一帯は、大麦の産地。米と違い、政治にコントロールされにくい原料でもある。
「麹は米で作る」という業界の常識に対し、素朴な疑問から麦麹の開発を決意。
1975年、日本で初めて、常圧蒸溜で麦と麦麹だけで造る無添加・大麦100%の麦焼酎が誕生する。
翌年には、全量を福岡・佐賀県産の二条大麦に限定した。

2002

平成14年 / 定義の確立 RECOGNITION

車夫馬丁の酒が、
世界と肩を並べた。

蒸溜器・原料・造りという骨格が完成し、
次は法律へ。造り・理論・法律、この三つが揃わなければ文化的な商品にならない——3代目はそう考え、本格焼酎の定義づくりに取りかかる。1980年代から定義の必要性を訴え続け、ついに2002年11月、「本格焼酎」の定義が公布・施行された。

3代目の夢がようやく実現。名実ともに「世界に誇れる本格焼酎」の基礎ができ上がった。かつて「車夫馬丁の酒」と呼ばれた焼酎も、一挙に世界と肩を並べる酒となった。
造り・理論・法律。三つが、ひとつに結ばれた。

2017

平成29年 / THE NEXT — 更なる革

クラフトマン多田誕生

大麦の可能性を、料理と響き合う一杯へ。
大麦の甘さとコクを引き出すため、醸造と蒸溜の探究を重ね、現在の基盤となる新たな理論と技術を確立してきた。
その成果を、料理とともに楽しむ酒として形にしたのが「クラフトマン多田」である。

目指したのは、料理の旨味を引き立て、食事をより豊かにする一杯。素材や調味料、調理方法との相性を考え、大麦の多彩な表情を味わいに込めた。

世界に誇れる蒸溜酒づくりへの挑戦は、食卓での新たな楽しみへと広がっていく。

2020

令和2年 — 素材との出会い

初のリキュール商品
コーヒースペシャリテ誕生

異なる造り手の探究が、新たな味わいを生む。
大麦の可能性を追求してきた天盃が、次に向き合ったのはコーヒーだった。焙煎の造り手との出会いをきっかけに、それぞれの素材の持ち味を生かす酒づくりが始まる。

試作を重ねて選んだのは、四代目が探究してきた乳酸発酵を生かした麦焼酎。大麦の甘さとコク、発酵がもたらす豊かな味わいを、コーヒーの香りや余韻と重ね合わせた。培ってきた醸造・蒸溜技術は、他の造り手との協業を通じて、新たな味わいを生み出す力へと広がっていく。

2024

令和6年 / 蒸溜酒の表現を広げる

ディスティラリーコレクション 

大麦の個性を、蒸溜酒の新たな楽しみへ。
大麦から、どこまで豊かな味わいを引き出せるのか。四代目が確立してきた醸造・蒸溜の理論と技術を土台に、その問いをさらに掘り下げる「ディスティラリーコレクション」が誕生する。

目指すのは、大麦が持つ甘さとコク、香りや余韻の可能性を、一杯の蒸溜酒として表現すること。食卓で育んできた楽しみを、バーや新たな飲み方へと広げていく。この土地で磨いてきた個性と技術を携え、天盃は世界に誇れる蒸溜酒づくりの次の一歩を踏み出す。

2025~

令和7年~ / 未来への探究

挑戦は今なお続く

この土地の大麦から、酒づくりの新たな可能性へ。
大麦の甘さとコクを引き出す。その探究は、大学や他の造り手との出会いによって、さらに広がっている。熊本大学との共同開発では、分裂酵母を用いた「JAPONICUS Barley S34」が誕生。LINNÉとの協業では、長年培ってきた大麦麹の技術と知見を生かし、大麦100%の醸造酒づくりにも挑んだ。

四代目が磨いてきた醸造・蒸溜の理論と技術に、五代目の企画や発信、異なる分野の知恵が重なる。
この土地の大麦から、新たな味わいと楽しみを世界へ届けるために。天盃の「世界に誇れる蒸溜酒づくり」への挑戦は、今なお続いている。